出題範囲
- 分野B:国際法務実務
- 事例問題(総合演習)
- 共通問題(企業法務総合)
- 分野A:企業法務実務
- 分野C:コンプライアンス・危機管理
例題に挑戦
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例題1
取締役の善管注意義務および監視義務に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例および実務上の通説に照らして、最も適切なものはどれか。
- 社外取締役は、常務に従事しないため、他の取締役の業務執行を監視する義務を負うことはない。
- 経営判断の原則は、取締役が自己の利益を図る目的で行った取引についても、その判断プロセスが合理的であれば適用される。
- 取締役は、内部統制システムの構築・運用状況を監視する義務を負い、重大な不備を放置した場合には善管注意義務違反を問われる可能性がある。
- 取締役は、法令・定款を遵守すれば足り、会社の規模や業態に応じたリスク管理体制を構築する義務までは負わない。
- 内部統制システムの整備に関する基本方針の決定を代表取締役に包括的に委ねることは、取締役会設置会社において認められる。
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正解: 取締役は、内部統制システムの構築・運用状況を監視する義務を負い、重大な不備を放置した場合には善管注意義務違反を問われる可能性がある。
正解は「取締役は、内部統制システムの構築・運用状況を監視する義務を負い、重大な不備を放置した場合には善管注意義務違反を問われる可能性がある」です。最高裁判例(大和銀行事件等)および会社法に基づき、取締役は会社全体の業務執行を監視する義務を負います。特に大会社における内部統制システムの構築は取締役会の専決事項であり、その体制が適切に運用されているか監視し、不備があれば是正措置を講じる責任があります。これらを怠り、会社に損害が生じた場合には、善管注意義務違反として損害賠償責任を負うリスクがあります。経営判断の原則は、誠実かつ会社を利する目的で行われた判断に適用されるものであり、自己の利益を図る不誠実な行為には適用されません。
例題2
会社法上の組織再編(合併等)の手続きに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 消滅会社の特別支配株主が存続会社の議決権の10分の9以上を保有している場合、消滅会社では株主総会の決議を省略できる。
- 存続会社において、交付する対価の帳簿価額が純資産額の5分の1を超える場合であっても、株主総会の決議は常に不要である。
- 吸収合併において、存続会社は効力発生日から6ヶ月間、事後備置書類を本店に備え置かなければならない。
- 債権者保護手続きにおいて、異議を述べた債権者に対しては、弁済、相当の担保提供、または信託を行う必要がある。
- 反対株主の株式買取請求権を行使するためには、原則として株主総会に先立って反対の通知をし、かつ総会で反対する必要がある。
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正解: 存続会社において、交付する対価の帳簿価額が純資産額の5分の1を超える場合であっても、株主総会の決議は常に不要である。
正解は「存続会社において、交付する対価の帳簿価額が純資産額の5分の1を超える場合であっても、株主総会の決議は常に不要である」です。会社法796条2項(簡易合併)によれば、存続会社が交付する対価等の帳簿価額が純資産額の20%(5分の1)以下であれば株主総会の決議を省略できますが、これを超える場合や、合併により差損が生じる場合(同条3項)などには原則通り株主総会の特別決議が必要となります。したがって「常に不要」とする記述は誤りです。その他の選択肢については、略式手続(90%以上の支配関係)、債権者保護手続の要件、事後備置書類の規定、および反対株主の買取請求権の行使要件(通知と反対決議)であり、いずれも会社法の規定に合致しています。
重要用語
- 善管注意義務
- 取締役などが、その地位や職業に応じて客観的に期待される程度の注意を払う義務のことです。会社法上、取締役は会社に対してこの義務を負い、これを怠って会社に損害を与えた場合は損害賠償責任を負います。事例問題では、取締役の行動がこの義務に違反しているかどうかが、任務懈怠責任の有無を判断する上で極めて重要なポイントとなります。
- 経営判断の原則
- 取締役の経営判断について、結果的に会社に損害が生じたとしても、判断の過程や内容に著しい不合理がなければ善管注意義務違反を問わないとする法理です。リスクを伴う経営決定において、過度な責任追及による萎縮を防ぐ目的があります。事例問題では、情報収集の十分性や意思決定プロセスの妥当性が検証の焦点となります。
- 表見代理
- 代理権がないにもかかわらず、本人と無権代理人の間に特別な関係があるために、第三者が代理権があると信じるに足りる正当な理由がある場合、その行為の効果を本人に帰属させる制度です。取引の安全を保護するための規定であり、民法上に定めがあります。1級の事例問題では、支店長などの肩書を用いた取引においてその成否がよく争点となります。
- 詐害行為取消権
- 債務者が債権者を害することを知りながら、自己の財産を減少させる行為(贈与や不動産の廉売など)をした場合に、債権者がその行為を取り消して財産を回復させる権利です。債務者の責任財産を保全し、債権回収の実効性を確保するための制度です。要件として債務者の無資力や受益者の悪意が必要であり、倒産局面の事例で頻出します。
- 契約不適合責任
- 引き渡された目的物の種類、品質または数量が契約の内容と適合しない場合に売主が負う責任です。買主は追完請求、代金減額請求、契約解除、損害賠償を請求できます。実務上の事例問題では、不適合を知った時から1年以内の通知制限や、責任を免除・制限する特約の有効性、さらには具体的な救済手段の選択が問われることが多い項目です。
- 不公正な取引方法
- 独占禁止法で禁止されている行為の一つで、自由な競争を阻害するおそれのある不適切な取引手段のことです。具体的には、抱き合わせ販売、再販売価格の拘束、優越的地位の濫用などが含まれます。事例問題では、企業間の取引契約が独禁法に抵触するかどうかを、公正な競争秩序の維持という観点から分析・検討する能力が求められます。
- 取締役の対第三者責任
- 取締役が職務を行う際に、悪意または重大な過失があった場合に、第三者に生じた損害を賠償する責任(会社法429条1項)です。会社が倒産し債権者が回収不能となった際に、役員個人の責任を追及する手段として重要です。事例では、放漫経営や粉飾決算、任務懈怠が「重大な過失」に該当するかどうかが、法解釈と事実認定の両面から問われます。
- 同時履行の抗弁権
- 双務契約において、相手方が債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる権利です。売買契約における商品と代金の引き換えが典型です。事例問題では、相手方の債務不履行を理由に自身の履行を拒否する際の正当な根拠として、あるいは遅延損害金の発生を阻止するための論理的な防御手段として頻繁に登場します。
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